Call It Anythin' Vol.3 |
大谷 能生 |
1月21日、ライター土佐有明氏が主催するライヴ・イヴェント「Call It Anythin'」Vol.3を見に行くことが出来た。去年の秋口から断続的に続けられてきたこの企画、第1回の出演者はロレッタセコハン、藤原大輔、藤井郷子カルテット、ECD。第2回は南博 GO THERE!、内海イズル(DJ)、田中亜矢、棗(なつめ)と、主催者の眼識が伺えるかなり面白いメンツが並んでいる。特に壁などある訳ではないのに、何となく同じようなメンツばかりステージに立ってしまい、客も何となくそれを見に行ってしまう最近のライヴ・シーンに、自腹を切って一石投じようという姿勢は積極的に支持したい。実際、こうした音楽イヴェントを個人で企画、運営して長続きさせるのはかなり大変なことで、ここ最近ではwebull-like recordsの曽田陽とgoboujinがオーガナイズする「指標ゼロ」もとても面白いシリーズなので、興味のある方は見に行った方がいいですよ。
さて、今回の「Call It Anythin'」の出演者は、Emergency!、勝井祐二、界、パニックスマイル。 トップバッターはパニックスマイル。2ギター(吉田肇、ジェイソン・シャルトン)とベース、ドラム/ボーカルというロック・バンドの基本的な編成で、奇数拍+偶数拍のリフを上手く組み合わせた曲を演奏していく。かなり激しいリズム展開部分でも、ラインを合わせるというよりは常に変則のダンス・ステップを踏んでいるようなノリで、全員のスピード感が落ちないのは気持ちがいい。ギター2人の個性的なプレイ―― 一方は残響と歪みの良く効いたシューゲイザー的なサウンドによる演奏、もう一方はパキパキ・ペケペケの乾いた音色で、クレズマーを思わせるような変わったラインを多用――の組み合わせを聴き分けているうちに、あっという間に演奏は終了してしまった。さすがに4バンドも出るとそれぞれの持ち時間が少なく、物足りないところもあるが、そう思ったら次はそのバンドのソロのギグを見に行けばいい、ということか。
二番手は界。ブラック・ミュージック・マナーのグルーヴィーな演奏にルーズなヴォーカルが出入りする、というアンサンブルで、パニックスマイルの極めて拘束感の強い変拍子ダンス・ステップとは正反対な、ビートを自由に割って踊ることの出来るダンス空間を作り出していた。バンドの演奏は非常に巧みで、複雑なリズム・アクセントやリフを楽に聴かせる。気になったのは、ヴォーカルが音頭回しを取りながら、時々ドリフ的な動きと表情でこちらにコミュニケーションを求める点。突っ込みどころとエクスキューズを用意しておくことで居場所を確保する、というメンタリティは実生活ではともかく、ステージ上では必要ないだろう。
次は勝井祐二のエレクトリック・ヴァイオリン・ソロ。何時もながら作り上げる世界がはっきりとしているのだろう、出音のコントロールが速く、ふと出た音も一瞬の内に曲の一部として回収され、E2-E4的なサウンドで演奏は淡々と続けられた。満杯に入った客の集中力を途切れさせない構成力は見事だと思う。
トリはEmergency!。1曲目はサイケデリックな長いイントロからミンガスの<Better Git It In Your Soul>。あらためて思ったが、斎藤 "社長" 良一のソロとバッキングの境目が曖昧なクシャクシャとしたトーンと、芳垣のわざと(だろう)綺麗な倍音が出ないように作ってあるドラム・キットとの相性はかなり良い。この日の後の曲はバカラックの<I Say A Little Prayer >(大友はボトル・ネックを使用してラップ・スティールのようなサウンドを出していた。めずらしい)、勝井をゲストに迎えて、ベニー・グッドマンの演奏で有名な<Sing Sing Sing>。ミンガスによる泥臭い、けれどもどこかアブストラクトなゴスペル・ミュージック、20世紀ユダヤ系作曲家の代表格バカラックによる変則リフのバラード(ヒットさせたのはアレサ・フランクリン)、ベース・ヴァンプとドラム・ソロが曲の要だという1930年代離れしたエキゾ・ダンス・ミュージックという、アメリカン・ポップ・ミュージックの中でも異彩を放つ、ポップスの中にエスニックな要素を溶かし込んだ味の濃いナンバーを演奏させると、このバンドは実に良くハマる。アンコールはクルト・ワイルの<マック・ザ・ナイフ>を高速スラッシュ・バージョンで演奏し、場内を沸かせていた。
土佐氏によると、1、2回目の客の入りが少し寂しかったので、今回はフライヤーを1万枚撒いてみた、とのこと。音楽を支えようとする熱意にはさまざまな形を取らせることが出来る。こうした直接行動は最もシンプルだが、実際は最も労力が必要となる作業だ。次回は未定だそうだが、是非ともこれからも活動を続けていって欲しいと思う。
(2004年1月21日 東京・秋葉原グッドマン)