2003年のベスト10 |
足立 智美 |
私個人の問題としてここ数年、見る/聴くということに対する動機が急速に低下している。むしろ自分が何をやるかをじっくり考えたいというのが正直なところだ。そんなわけで昨年も決して多くのものを体験していないので、わずかな中から選んだことは留意して欲しい。そもそも日記をつけたりしてるわけではないから1年前に何を見たかなどほとんど分からない。そのせいで年度後半に極端に偏っている。ちなみに順不同。
(01) 香港のマルチメディア・パフォーマンス・グループのZUNIが昆劇の名優と組んだ作品。夢の中の恋物語を題材にした中国古典文学とフロイトというベタなコンセプトながら、舞台上のパフォーマンスそのものを、テキストの引用と恐ろしく洗練された舞台装置、映像で対象化してしまう演出家ダニー・ユンの手腕にはただただ敬服。
(02) 昨年見たダンスの中では最も優れたもの。音楽、照明を一切用いず、微分された身振りから最大限の快楽を引き出してみせる。ダンスの根源。
(03) きっと他の評者も挙げていることだろうが、日本の産んだ異形のモダニストのディスクが、優れた演奏と録音で世に出たことを素直に喜びたい。とにかく録音に恵まれないこの天才作曲家の不運な状況が転じることを祈る。
(04) これまた異形のモダニストの最も過激な60年代-70年代初めの大大大傑作群が遂に復刻CD化。
(05) 飛行機の都合で到着が遅れに遅れたシンガポールのダンサー/ミュージシャンの駆け込みパフォーマンスは、それまでの2人の猛者達の演奏を一瞬に飛び越えてしまった。身振りと声で紡がれるとてつもなく平和でとてつもなく過激な歌。
(06) 破壊され煙を上げるコンピュータの内部音を聞かせる "computermusik I" はテクノロジーと音楽の現在を明るみに出す傑作だ!
(07) 明快な政治的メッセージとリアルタイムによるマルチメディア・パフォーマンスというコンセプトが相まって、メッセージとコンセプトが相互に緊張をはしらせる屈指のパフォーマンスとなった。
(08) 70年代のパフォーマンスの記録が充分でないとか、80年代以降のパヴィリオンはベストな展示法ではないとか不満はあるものの、60年代のコンセプチュアルな作品群をはじめ、とにかくこのNYアンダーグラウンドのグルの全貌に触れることができるのはうれしい。カタログも大変充実。
(09) 尾崎翠の1930年代の作品を昨年のベストに挙げるのは、単に私が昨年読んだ、ということに過ぎないのだが、それが私の中で事件になってしまうほど、この作品は衝撃だった。あらゆる思潮を凌駕するものだけが普遍に到達することをまざまざと教えられた。しかも私はここに『阿修羅ガール』や『ららら科學の子』より強く同時代性を感じるのだ。
(10) 迷ったが自分のライヴをここに挙げておく。ソロの活動と集団による活動が内容的にも方法的にも分離してしまった一年だったが、ひとつ挙げるならライヴ・ヴィデオと野菜という後につながるコンセプトを形にできたということでこの日だろうか。