2004年のベスト10

足立智美


(01) [Performance] 10/10 Eva Meyer-Keller: Death is certain @ PACT Zollverein Essen
(02) [Live] 11/05 Chris Mann: Plato songs @ Künstlerhaus Dortmund
(03) [Dance] 12/28 Trisha Brown / Ballet de l'opera: Glacial decoy @ Palais Garnier, Paris
(04) [Live] 11/27 Jens Brand: Motoren und Styropor @ Museum Kunst Palast, Düsseldorf
(05) [Live] 11/02 Yasunao Tone: Wounded Man'yo @ Galerie Rachel Haferkamp, Köln
(06) [Film] 10/26 Mauricio Kagel: Zwei-mann Orchester @ Galerie Rachel Haferkamp, Köln
(07) [Visual Art] 10/02-05/01/09 Rebecca Horn: Bodylandscapes @ K20, Düsseldorf
(08) [Dance] 12/11 Pina Bausch / Tanztheater Wuppertal: Ahnen @ Schauspielhaus, Wuppertal
(09) [Visual Art] 10/08-05/01/09 Le IIIe Reich et la musique @ Musée de la musique, Paris
(10) [Visual Art] 10/08-11/14 Simone Eberli und Andrea Mantel: Eberli-Mantel @ Künstlerhaus Dortmund

 折角なので9月下旬にドイツに居を移してから見たものに限定した。実際には日本で見たものでかなりの上位に来るものも少なくないが、海外在住という状況をちょっと特権化してみる。私がこの時期に見たという意味なので1972年の作品まで含まれている。ただそれは私が同時代という要素を見出したからであって、《セザンヌ展》(Cezanne - Aufbruch in die Moderne @ Museum folkwang Essen)がどれだけ良かろうとこのリストには含めていない。順位は二分され上位5つと下位5つの中はほとんど甲乙つけがたいが、さまざまな政治的な理由も含めて敢えて順位づけした。したがって必ずしも質自体と順位は一致していない。また私個人の活動に直接関係する項目もあるが、それはベスト10という通俗性に免じて許してもらおう。

(01) 新鮮で面白く、ただそれだけの理由でEva Meyer-Kellerが最上位に来るのは間違いない。自分の同世代でこれほどの才能を発見できただけでもドイツに来た甲斐があるというもの。本サイトMisc Review参照。

(02) 決して若くはないが、約10年前に日本で見たときの衝撃を更に上回る感動をもたらしたChris Mann。ジェイムス・ジョイスが楳図かずおに憑依したような朗読が喉の発音システムに従ってリアルタイムで8チャンネルに分配される。現代文学と電子音楽の希有の結合。7月に日本に呼びます。

(03) トリシャ・ブラウンの1979年の作品を2003年からパリ・オペラ座バレエ団がレパートリー化している。ポスト・カニングハムの極めて原理的な作品を完璧なテクニックで実現されてしまうと、80年代以降コンテンポラリー・ダンスが単なる応用に見えてしまう。無音のダンスに対してまるで音楽のように機能するロバート・ラウシェンバーグの美術も素晴らしい。

(04) 長年の友人であるヤンス・ブランドの旧作でしかも見るのも二度目だがまったく驚くべき音響。発泡スチロールで作られたラフな抽象彫刻がモーターの振動でうなりだした瞬間はまさに目から鱗。最近は地球をディスクにみたたて再生するG-Playerを開発/販売するなど、極端なコンセプトと微妙なユーモアが共存する彼の名前が日本で知られないのはまったく解せない。

(05) パフォーマンスのクオリティではトップに来てもおかしくないが、日本でも既に知られているし、ディスク(Asphodel, ASP 2011)にもなっているのであえてこの位置に。それにしても70歳になろうというのに、このラディカルぶりにはもはや脱帽。

(06) 1972年の作品だがカーゲルの絶頂期のしかもライヴの代替ではないフィルム作品としてここに置く。日本で上映会やりましょうよ。

(07) 70年代の最重要パフォーマンス・アーティスト、レベッカ・ホルンの仕事を集大成した展覧会。90年代からのキネティック・マシンのかずかず、80年代以降の劇映画も含めた完全なフィルム上映と合わせて、身体を巡る彼女の思考のラディカルさをあらためて実感させた。

(08) 87年作品を本拠地シャウシュピールハウスで初見。私はピナ・バウシュの創作のピークは80年代後半にあると考えているが、それはバウシュの作品を裏付ける重々しい意味のかずかずが、この時期にはもはや知覚不可能なほど堆積されてアナーキーな炸裂として舞台に展開するからだ。スコットランド・パンクの冒頭からヘリコプターが乱入し、アメリカ・インディアンの影が舞台奥にぼんやり浮かび上がる息を呑むような終結まで、やはり舞台芸術のひとつの極ではないだろうか。

(09) 《第三帝国と音楽》という特に目新しい題材ではないが、ナチス十字に囲まれた工場で熱演するフルトヴェングラーの各種フィルムから、ウルマンの主催する収容所内の新音楽研究会の手書きチラシ、ヒトラーの死を伝えるラジオ放送とそれに続くシューベルトの《未完成》まで、膨大な資料をトランスミッターとMP3プレーヤーで視聴覚両面に亙って伝える完璧な構成にちょっと衝撃。展示の立脚点もさることながら音楽の展覧会として極めて斬新かつ完成度が高い。

(10) こちらにきてつくづく実感したのは芸術は流行やファッションでは絶対にないということだ。過去のものと思われたスタイルに新しい思想が吹き込まれるのを見るのは感動的だ。その象徴的な展覧会をひとつ。道行く人に声をかけ、レンブラントからリヒターに至る名作のかずかずを時間をかけて再撮影する彼女たちの作品は、80年代のシミュレーショニズムからアイロニーを払底し、そこに社会との緊張を大胆に注入する。

(c) 2005 ADACHI Tomomi
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